灰色猫のはいねの生活

天使猫と派遣猫

有能なあたしとはちょっと違うケド、このびっこをひいたチロのように、右目が腫れて生まれた白い仔猫のように、いわゆる「普通」の「あたりまえ」よりも、ちょっぴり変わっていたら、それが「天使」の印なの。
チロのびっこのかわりに、仔猫の腫れた右目のかわりに、その猫背には天使の羽根が生えている。
そんな天使があなたの前に現れたら、どうか大切にしてあげて。
天使は必ず、あなたにメッセージをくれるから。

だから有能なあたしは天使とはちょっと違うのよ。
そりゃあ、天使みたいに可愛くはあるけどね。
あたしたち派遣猫はもっと現実的。
猫族の掟「幸せと共にやって来て、不幸と共に去って行く」がモットーな派遣猫。
それも百戦錬磨のスーパー派遣よ。
ほら、人間界にも「派遣の品格」ってドラマがあったじゃない？
北海道の星、大泉洋ちゃんの出てたヤツよ。
篠原涼子のＣＤも持ってるわ。
とにかく、あたし達はあたし達を必要とするところへ呼ばれるの。
そりゃあ、今はきちんと募集要領が出されてるけど、１番必要なのは心の声。
まあ、手っ取り早く言えばびびっとくるのよ。
そんな募集を見つけたら、派遣歴を書いた履歴書と派遣願いを出して、猫族の派遣協会に申請。
面接や適応をみて、協会から認可が出てようやく派遣されるって訳。
だから猫との出会いは偶然じゃあないのよ。
全てあなたが必要としていたから。
そもそも出会いに偶然なんか１つもなくって、全て自分で望んだり必要としたりしたもの。
どんなに辛いことや苦しいこと、哀しいことでもね。
それを乗り切るために、ほんのちょっぴり手助けするのがあたし達、派遣猫なのよ。
ただ側にいるだけで癒やされる癒やし猫や、何となく幸運を運んでくる招き猫。
いろんな派遣猫がいるけれど、あたしみたいなスーパー派遣の見分け方を教えるわね。
カンのいい猫好きならびびっとくるで判っちゃうんだろうけど。
あたしたち猫の顔をよく見て。
ただ可愛いなんて思わないでね。
あたしたちが可愛いのはあたりまえでしょ。
じっと見て。でも眼なんて合わせないでね。ケンカ売ってると思われるから。
何となく、本当に何となくニンゲンみたいな顔をしてたら。
それは百戦錬磨のスーパー派遣よ。
ニンゲンの言葉なんてニンゲンより判ってるからうかつなことは言わないように気を付けて。
そしてそんな派遣猫を見つけたら。
一言「お疲れ様」って言ってみてね。